既報の通り、平成21年度の税制改正で、非上場株式の納税猶予制度が創設されました。これで、納税猶予制度は2つになりました。もう1つの制度は、農地の納税猶予制度で昭和50年に創設された歴史のある制度です。 「株式」と「農地」では、おのずとそれぞれの猶予制度の適用を受けるための「手続」及び「要件」は異なりますが、「課税価額の計算」及び「猶予税額の計算」方法は同じでは、と考える向きもあるかと思いますが、実のところこれも異なります。 (1)みなし相続の場合の課税価額の計算 父から農地等を生前一括贈与受け、その贈与者ある父が死亡したとき、その受贈者(子)は一括生前贈与を受けた農地等を相続により取得したものとみなして、相続税額の課税価額の計算及び相続税額を計算します。一方、非上場株式の生前贈与についても、同様な計算をします。 しかし、みなし相続財産として課税価額の算入される価額は、農地等の場合は相続開始時の評価額になりますが、非上場株式の場合は、当該株式の贈与時の評価額になります。 このような差異は、その財産の持つ性質の違いから設けられたものと思います。 (2)猶予税額の計算方法が異なる 農地等の納税猶予額の計算は、農地等の通常価格が農業投資価格を上回る部分に対する税額を、その他の相続財産を加えたいわゆる上積み計算したところの税率を適用して猶予税額を算出しています。 一方、非上場株式に係る相続税の納税猶予税額の計算は、非上場株式のみを相続したものとして下積み計算したところの税率を適用し、かつ、その20%相当額の差額による猶予税額を算出しています。結果、農地等の猶予税額の方が大きく算出されます。 また、農地等の納税猶予の特例は、農業相続人でない者の相続税額の負担も軽減し、加えて、その軽減部分は農業相続人の猶予税額を構成し、将来納税猶予が確定しても確定納税額は、原則、農業相続人だけが負担することになっています。 さらに、非上場株式の納税猶予制度においては、猶予税額確定に係る免責制度(譲渡対価が猶予税額を下回る場合や破産した場合の免除等)がありますが、農地等にはありません。
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