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東京還付ストーリー (前編) |
監督・脚本・語り 藤森 雅仁 キャスト 森尾 カンジ・・・モリ蔵 |
不二名 リカ・・・不二子 |
昨年8月末、競馬好きのカンジは生まれて初めての万馬券をゲットした。 1110倍の大万馬券で約550万円を儲けたカンジは、その夜男友達3人を連れて 六本木、銀座を豪遊しまくった。そして、その一週間後に会社を辞めて、 ガールフレンドの「リカ」には一言の連絡もなしに 海外旅行に行ってしまった。 その後の「カンジ」の生活といえば、仕事もせず競馬、 パチンコ、旅行に夜遊び三昧だっ たそうだ。 そして今年の2月バレンタインデーに、「カンジ」と「リカ」は久しぶりに再会したのだったが・・・・・。 |
「リカ」 |
私に一言もなしに会社辞めちゃって、もう、すごく心配したんだから。「カガ課長」には私から良く頼んでおくからまたダイヤスポーツに戻ってきてよ。 |
「リカ」と「カンジ」はダイヤスポーツという会社の同僚である。 | |
「カンジ」 悪かったな「リカ」。いやあ「リカ」がいて助かるよ。今不景気でなかなか就職先が見つからなくてさ。それで悪かったついでにもう一つ頼みたいことがあるんだけど、とりあえずお金貸してくんないかなあ。
「リカ」 何を言ってるのよ。今日は競馬で儲かったお金で、バッチリとご馳走してもらおうと思って いるのに。まさか競馬やキャバクラに、全部つぎ込んじゃったわけじゃないでしょうね。
「カンジ」 全くもって面目ない。家賃やら水道光熱費やらを払うのがやっとでさあ、飯もろくなもの食べてないんだぜ。そんでもって、住民税の支払いの通知なんかきちゃってさ。もうやんなっちゃうよ。 |
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「リカ」 |
そんなの自業自得でしょ。でも税金の話といえば、「カンジ」今年確定申告をすれば税金が戻ってるんじゃないかしら。8月に会社を退職してその後は何も仕事をしていなかったんでしょ。月々お給料から引かれていた源泉税の4か月分ぐらいは最低戻ってくると思うのよねえ。 |
「リカ」の話を聞きながら、「カンジ」はポケットから手帳とボールペンを出そうとしたが、 その時なにやら一枚の紙が机の下に落ちた。「リカ」がそれを拾った。 |
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「リカ」 | これなあに? |
「カンジ」
あ、それそれ、俺の競馬をするときのお守りにしているんだよ。生まれて初めて当った万馬券なんで、払い戻しをする前に記念にコピーをとっといたんだよ。なるほど、さすがは「リカ」頼りになるねえ。 そうすると俺の給料から引かれている月々の源泉税が約17000円だから70000円近く の税金が戻ってくるのかな。 そうと聞いたら効しちゃいられない。すぐにでも税務署行って還付してもらわなくっちゃ。
「リカ」 でもその馬券のことなんだけど、あ、「カンジ」ちょっと待って待ってよ・・・
「カンジ」は「リカ」の話を聞く余地もなく、レストランを出て行った。もちろん勘定は「リカ」まかせで。 |
「リカ」 | あああ、人の話を最後まで聞かないで行っちゃうんだから。もうどうなっても知らないら。 |
「リカ」の心配をよそに、笑顔で税務署にダッシュした「カンジ」だが・・・・・ |
注 この物語はフィクションであり、登場人物・団体等の名称はすべて架空のものです。 |
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